サワノらしい新しさと懐かしい響きを持った作品
そこに程よいイタリア的哀感も加わった、フランチェスカの魅力全開盤
イタリア生まれ、オランダでピアノと歌を学んだというフランチェスカ。ピアノトリオの名門サワノのお眼鏡にかない、いままでに3枚の作品をリリースしていて、本作が4枚目。サワノのピアノトリオというと、やはり(ざっくりと)欧州ジャズの美しさをパッケージしたものが多いのですが、フランチェスカはちょっと持ち味が違うんですよね。地がファンキー、それも50~60'sのマナーに通じていて、惚れ込んでしまいます。
例えば、オープニング「Old Devil Moon」、次の(2)「Gee, Baby, Ain't I Good to You」。このファンキーなフィーリング、レイドバックしたブルース感はどうでしょう。続く、(3)「Hope」、(5)「I'll See You in My Dreams」は彼女の自作曲。イタリアらしい、カラッとした哀愁と美しいメロディがたまりません。そして、もう一つの魅力がヴォーカルです。(4)「Forse」は同郷のピアニスト、ブルーノ・マルティーノの曲。イタリア語による艶やかな弾き語り。
途中のピアノソロも感情豊かでいい。さらにファンキージャズといえば、(7)「Moanin'」は来日コンサート(2016年)でも弾いていた彼女のルーツにある曲。(8)のオスカー・ペティフォード、(10)オリヴァー・ネルソンの隠れたジャズオリジナル曲を取り上げるのも興味深い。最後の(11)「Old Folks」……何か引っかかると思ったら5拍子に編曲された演奏でした。
全曲を聴いて、サワノらしい新しさと懐かしい響きを持った作品ですね。そこに程よいイタリア的哀感も加わった、フランチェスカの魅力全開盤だと思います。
Text by 神尾 孝弥
1.[CD]
1.Old Devil Moon
2.Gee, Baby, Ain't I Good to You
3.Hope
4.Forse
5.I'll See You in My Dreams
6.A Time for Love
7.Moanin'
8.The Gentle Art of Love
9.'S Wonderful
10.Step Right Up
11.Old Folks
(澤野工房) AS504 CD